数十億ドル規模と言われる超小型モビリティ市場をリードするために、企業はデザイン思考の原則を導入することで、顧客の課題や要望を理解し、物理的・デジタル的な顧客接点を統合した包括的なユーザージャーニーを描き、卓越した乗車体験を創造して、ブランドロイヤルティを獲得していく必要があります。
人々にステイホームを強いた新型コロナウイルスの世界的な流行は、超小型モビリティを含む輸送業界にも打撃をもたらしました。パンデミック以前、マッキンゼーは、自転車や電動スクーター、モペッドといった軽量車両を中心とする超小型モビリティ業界の市場規模が2030年までに3000億~5000億ドルに達すると予測していました。しかし、2020年3月以降、ユーザーの移動距離は世界的に50~60%減少しています。一部のモビリティシェアリング企業は、ウイルス感染のリスクを避けるため、完全にサービスを停止しました。その後、それらのサービスは再開されたものの、リモートワークの普及と、旅行や外食といった外出の減少、何より人々が新しいものを発見しようと動き回らなくなったことで、需要は低下しました。
ただ、幸いなことに、超小型モビリティ分野は、並外れた回復を遂げる可能性を秘めています。ガソリン車より環境に優しく、エネルギー効率に優れ、従来の公共交通機関より衛生的だとも言えます。そのため、世界中の都市や政府は、交通量と二酸化炭素排出量を削減する手段として、自転車レーンなど超小型モビリティ向けのインフラ投資に前向きです。何よりオープンエアの移動は単純に楽しいものです。そこに超小型モビリティ企業が成功を続ける鍵があります。ユーザーがラストワンマイルの移動サービスに期待していることや、利用を妨げている要因を探ることが重要です。
Starは最近の調査で、業界をリードする超小型モビリティ企業のテクノロジー、サービス、ユーザー体験を分析し、出現しているトレンドや差別化のポイントを探りました。競争の激しい分野で抜きんでて、明るい未来に向かって好位置を確保するために、企業はどのような戦略を取ればよいでしょうか? 重要なのは、包括的なユーザージャーニーを理解・維持・強化することです。そして、それを最も効果的に達成するための基礎となるのが、デザイン思考の原則です。
デザイン思考の原則に基づいて、超小型モビリティの顧客接点をマッピングする際のポイントをまとめたシートを用意しています。ぜひご活用ください。
ユーザージャーニーの地図を描く
カスタマージャーニーマップをいかに作成するかは、超小型モビリティ分野に限らず、自動車&モビリティ業界全体の大きな課題です。マップの作成には、まず顧客が自社をどのように知るのかを理解し、顧客と自社とのあらゆる接点を洗い出す必要があります。超小型モビリティ企業の場合、企業ウェブサイト、ソーシャルメディア、ロイヤルティプログラム、自転車や電動スクーターのダッシュボード、ユーザー向けモバイルアプリなどが一般的な顧客接点となるでしょう。
顧客接点をすべて抽出できたら、「エクスペリエンス・ビジョン」を作成します。これは物理的・デジタル的な顧客接点を継ぎ目なく統合した、包括的なユーザーエクスペリエンス(フィジタルCX)をデザインするための大局的なプランのことです。それに基づいてカスタマージャーニーマップを作成することで、自社のビジネスを、製品・サービスが相互接続されたユーザー体験をもたらす「デジタルエコシステム」へと進化させられます。
デジタルエコシステムのメリットとは?
アップル、アマゾン、マイクロソフトを含む世界の7大企業のうち6社がデジタルエコシステム戦略を採用していることからも、その価値を理解していただけるでしょう。このアプローチにより、部門を超えたデータの共有や、包括的なユーザーエクスペリエンスデザインの実現を促進できます。超小型モビリティ企業は、あらゆる製品・サービスを相互接続したデジタルエコシステムを構築することで、ユーザーのニーズや好みに合わせてデザインされ、密接に連携した、シンプルで優れた体験を生み出せます。これは若い世代が重視する革新的なブランドの確立にもつながります。先進的なラストワンマイルの移動を提供するには、エクスペリエンスデザインも先進的でなければなりません。
さらに、ユーザー接点を連携させることで、より多くのデータから、より深い洞察が得られます。その情報を活用することで、ユーザー中心のデザイン、スマートな製品やサービス、効果的なマーケティング、強力なロイヤルティプログラムへの道が開かれます。ユーザーニーズに対応した新たなサービスの開発など、ビジネス拡大に向けた筋道も見えてきます。
デザイン思考で、印象的なユーザー体験を創出
デジタルエコシステム以外にも、業界をリードする企業には共通点があります。それはデザイン思考の原則を用いて、カスタマージャーニーを描いていることです。デザイン思考とは、製品・サービス・体験をデザインするためのユーザー中心のアプローチです。チーム全体で、あらゆる顧客接点を見定め、そのすべての過程でのユーザーニーズを検討します。そして、この接点を経た後に顧客はどう感じるだろうか? 成功をどのように測定すればよいだろうか?といった問いを立てながら、各インタラクションでの目標を設定します。
超小型モビリティ分野におけるデザイン思考では、以下がポイントになります。
- チームワーク:カスタマージャーニーの全体像を描くには、各部門の協力が不可欠です。
- 共感(エンパシー):ユーザーの立場になって考えることで、より深く顧客を理解でき、より人間中心のデザインが可能になります。
- 創造性:前提や先入観を問い直し、古い問題に新しい方法でアプローチすることが重要です。
- 復元力(レジリエンス):デザイン思考は実験精神を重視します。顧客の課題を解決し、エクスペリエンス・ビジョンを実現する最適な方法を発見するまで、テスト、測定、再構築を繰り返すことが大切です。
- フィジタル化:「フィジタル」デザインとは、インタラクティブな体験を通じてオンラインとオフラインの世界をつなぐものです。超小型モビリティ分野では、ロック解除や駐輪といった物理的な体験とデジタル技術を融合させ、オンライン/オフラインでのブランドの存在感を高める施策となります。
超小型モビリティ業界におけるユーザージャーニーの未来
超小型モビリティ業界は、パンデミックによる混乱を経て、再び急成長の軌道に乗りつつあります。持続可能性、優れたコストパフォーマンス、移動する楽しさといった基本的な提案価値は事業者間で共通する部分が多いなか、オンラインとオフラインの境界を越えて、継ぎ目のないユーザー体験を提供することで、市場での差別化を図れるでしょう。そのためには、デジタルエコシステムを構築し、デザイン思考の原則に基づいた顧客接点を生み出すことが重要です。
このような戦略は、いずれどの企業でも不可欠なものになるはずです。新型コロナウイルスは、企業と顧客のデジタルトランスフォーメーションを加速させ、顧客は真にシームレスで相互接続された体験を期待するようになりました。これからは、顧客を深く理解した上で、エンドツーエンドの卓越したカスタマージャーニーを提供する企業が、超小型モビリティサービスのリーダーとして台頭してくるでしょう。
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