わずか7か月で
AIを活用した体外診断用
医療機器を開発
概要
gMendel®が目指すのは、遺伝性疾患の診断を変革して、より良い疾病管理を実現することです。Starは同社の設立当初から、エンドツーエンドのメドテック製品の開発をサポートしてきました。
ここでは、gMendel®とのコラボレーションのパート2として、Starのヘルステックエンジニアリングチームが提供したソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)の事例を紹介します。Starの医療規制コンサルティングが、規制当局の承認を得るための基盤を築いた事例については、こちらをご覧ください。
✓ Phivea®プラットフォームの最初のバージョンを、わずか7か月で設計・開発
✓ 最初の段階からEUの医療機器に関する規格と規制を満たし、gMendel®をCEマーク付きの体外診断用医療機器としてデンマーク市場に投入
✓ 業界における信頼を築き、成熟した企業としてのgMendel®の評価の確立に貢献
✓ IEC 62304およびその他の整合規格に準拠していることを証明するために必要な、すべての記録と文書を提供
✓ 診断にかかる時間を数か月から数時間へと大幅に短縮
✓ gMendel®のスクリーニング技術で遺伝性疾患を早期に診断できることを実証(出生前の疾患を含む)
アイデア
gMendel®は、医療機器クラスのソフトウェアの専門知識を持つパートナーを求めていました。とくに設計・開発段階でのEUの規制と規格への整合を確実にするため、同社は以下の3点を重視していました。
- ISO 13485認証取得済みの品質管理システムのもとで運営されている企業であること。
- IEC 62304に対応したプログラム医療機器(Software as a Medical Device、SaMD)のソリューションの適用についての専門知識があること。
- ソフトウェア開発チームが、ソフトウェア開発ライフサイクルの標準的な役割(プロジェクトマネージャー、ビジネスアナリスト、品質保証、開発者、DevOps)をすべて提供できること。
要するに、同社はStarのヘルステックチームのようなパートナーを探していたのです。もちろん私たちStarにとっても、このような野心的なプロジェクトに協力できることは喜びでした。
プロジェクト
スタートアップ企業であるgMendel®は、競争の激しいバイオテック・メドテックの世界で足がかりを得るために、次のような課題に取り組む必要がありました。
- 医療提供を向上させるための技術的なイノベーションを起こすこと。
- 医療機器メーカーになるためのノウハウと、規制のある市場で体外医療機器を販売する方法を習得すること。
- 製品のアイデア出しから、設計、開発、発売までを、予算内で迅速に行えるようになること。
- 収益が得られる仕組みを確立し、市場における製品を評価して、ベンチャーキャピタルの投資を引きつけるために重要となるマイルストーンを達成すること。
プロジェクトの開始当初から、きわめて野心的な目標が掲げられました。gMendel®からの依頼は、まだ開発されていないAIモデルを用いて、複数の遺伝性疾患を診断する、まったく新しい医療機器を共創すること。しかも、体外診断用医療機器規則(IVDR)の変更が迫っているため、体外診断用医薬品(IVD)の品質をもつ製品を、非常にタイトなスケジュールで開発しなければなりません。
プロジェクトの開始は2021年7月。Starは、求められるエンジニアリングの役割を提供し、製品ライフサイクル(PLC)のレベルから、ISO 13485の規格で要求されるソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)の構築に注力しました。
新規参入企業が最初のプロジェクトを行う際には、医療機器分野の規制、ノウハウの不足、文書化に慣れていないといったことから遅れが生じがちです。そこで、Starの規制コンサルティングチームが、専門知識と独自の品質管理システム(QMS)ソフトウェアを用いて、目的説明、製品要件、リスク管理措置などでgMendel®を支援。これにより、SDLCのプロセスをいち早く開始できました。
Starのプロジェクトマネージャーが、ソフトウェア開発計画やIEC 62304の要件など、SDLCに関するあらゆる動きをコーディネート。プロジェクトが、技術的なソリューションを提供するだけでなく、安全で効果的、かつ文書化されたものになるよう調整しました。
同時に、Starのビジネスアナリスト(BA)が、ソフトウェア要件の文書化、ユーザーストーリーの作成、製品の動態を記述する詳細設計に取り組みました。これらの仕様はJIRAチケットにリンクされ、その後の開発スプリントのための製品ロードマップの構成につながります。
このような詳細設計があることで、品質保証エンジニアは、仕様をもとに試作ソフトウェアをテストし、最終テストに向けたシナリオを作成できます。
そしてチーム全員が、ソフトウェアレベルで要求される、リスクマネジメント活動に参加。リスク管理対策をソフトウェア要件に反映させることで、安全な体外診断用医療機器を開発するための準備を整えました。このステップは規制当局の承認を得るうえでも重要です。
次にエンジニアが、技術スタックの中から慎重に選んだ、Javaをはじめとするテクノロジーを使ってソリューションを実装。その際に重視したのは、拡張性と、データのイングレス・診断・エグレスを担う要素間でアーキテクチャを分離することです。AIモジュールもアーキテクチャ的に分離し、システムが通信できるAIの数を調整できるようにしました。
一方、gMendel®のチームは、特定の遺伝性疾患の診断を返すAIモデルの開発に取り組みました。試行錯誤の結果、すべてのAIモデルが提供されたわけではないものの、慎重に構築されたシステムアーキテクチャのおかげで、すぐれたAIモデルをPhivea®プラットフォームの最終バージョンに組み込むことができ、スクリーニングする遺伝性疾患を将来的に追加するための基盤を構築できました。
インフラストラクチャのサポートで重要な役割を果たしたのが、DevOpsです。製品を効果的かつ安全に実装できるよう、リリースされたバージョンの製品のインストール、デプロイ、保守の方法を設計し、専用のマニュアルに記述します。その結果、製品のリリース時点で、IEC 82304の運用フレームワークに対応する準備を整えることができました。
全体として、このコラボレーションはプロジェクトを迅速に成功へと導きました。SDLCチームはプロジェクトの終了までに、Phiveaの迅速な市場投入に必要なエンジニアリングソリューションと、指定された規格・規制で要求されるすべての文書を、gMendel®のPLCチームに提供。 それにより同社は社内のリソースを、スタートアップ企業が成長するために欠かせない他の業務に集中させることができたのです。
お客さまの声
あらゆるスタートアップ企業にとって、市場投入までの時間は、命運を左右する要素の1つです。StarのSDLCチームの完璧な仕事により、私たちは素晴らしいスタートを切ることができました。Starの貢献がなければ、gMendel®はこのような成功を収めることはできなかったでしょう。
Zoran Velkoski
gMendel® 共同設立者
プロジェクトスコープ
- 体外診断用医療機器ソフトウェアの設計開発(Class B、IEC 62304)
- プロジェクト管理
- ビジネス分析
- ソフトウェアエンジニアリング
- ソリューションアーキテクチャ
- 品質保証
- DevOps
テクノロジー
- Biopython
- Phyton
- Scikit-learn
- Docker
- Linux
- ベアメタルデプロイメント