人工知能(AI)の爆発的なイノベーションが続いています。その動きがとくに顕著なのがヘルスケア分野です。ただ、世界中に多種多様な医療システムが存在する中、この新しいテクノロジーを開発・実装するための万能なアプローチはまだありません。
ポッドキャストでは、この分野の専門家がヘルスケアにおけるAIの課題と可能性について解説し、次のような知見を共有しました。
- 大規模にAIを導入する必要はありません。画期的な新技術が登場すると、すぐに大規模に展開しなければならないと考えがちです。しかし、リソースが限られているヘルスケア事業者は、大掛かりなプロジェクトに着手する前に、組織のニーズに即して「市場に確実に適合するよう、アルゴリズムやアプリケーションのごく一部」への導入から始めるべきだとViktor Zamaruievは話します。
- データの標準化がなされていないことが依然として課題です。「プライバシー上の理由と、米国のHIPAA(医療保険の携行性と責任に関する法律)による保護のため、データの移動が難しいケースがよくあります。また、特定のワークフローやニーズに特化したデータから、AIソリューションを構築することも簡単ではありません。データは多く存在しますが、今後はそれを実行可能なシステムにいかに取り込むかが課題となってくるでしょう」
- NLPが世の中の流れを変えています。NLP(自然言語処理)により、コンピューターが人間の言語を読み取り、理解・解釈できるようになっています。Justin Klien氏は、「現在成功を収めているスタートアップ企業の中に、NLPを活用してデータセットを動的に標準化し、精度やデータの拡張性といったシステムに固有な問題を解決している事例が見られます」と話しました。
- ビジネスとエンジニアリングの垣根を取り除く。Victorは、ビジネス部門と、エンジニアリング・研究開発部門との間に大きなギャップがあることを指摘しました。この問題を解決するには、「チームを融合させるために、例えば、同じ部屋を共有するなどして、協調して仕事を進めていく必要があります。ヘルスケア領域の専門家と、ソフトウェア開発者やデータサイエンティストを含む多様なチームとの共同作業から相乗効果が生まれ、より良い結果を導くでしょう」
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ポッドキャストは英語で提供しています
AIソリューションの未来
AIがヘルスケア分野で威力を発揮することは、すでに実証されています。市場に参入するプレーヤーが増える中、革新的な企業は次のような総合的な戦略によって、実装時の課題に対処していくでしょう。
- 包括的なフレームワークの構築:Justin Klien氏は、次のように述べています。「まず重要なのは、ガバナンスをどのように提示し、データの経路や転送方法をどう実証するかについて、現実的な視点で考えることです。クラウド化する機能を最小限に抑えたり、機能を組み合わせたりできる可能性はないかと検討してみるのです」
- Cコロナウイルスがもたらした前向きな変化:「新型コロナウイルス感染症は世界中の研究者を団結させました。このような動きや、相互運用性のルール整備によって、データへのアクセスが簡素化・標準化され、健康関連データへのより民主的なアクセスが可能となっています」とVictorは説明します。これはAIによるイノベーションを後押しするでしょう。
- AIと遠隔医療の共生:遠隔医療の普及は、AIを活用したテクノロジーがどれだけ受け入れられていくかにかかっていると言えます。Justin Klein氏は、今後10年間で「遠隔医療では、スマートフォンのカメラを使った診断や測定が可能になり、アクセシビリティが大幅に向上すると予想されます。それにより、診断が進化し、ケアや治療を利用しやすくなって、新たな機会を生んでいくでしょう」と述べています。
- デジタル臨床試験: Victorは、今後10年以内に「医薬品の臨床試験や研究が、動物や人体を使うことなく、オンラインで行われるようになる」と予測しています。「病気や物質の種類をシミュレーションするだけで、試験ができるようになるはずです。柔軟性の高いクラウドの計算能力も研究に活用されるようになるでしょう」
AIはヘルスケアに大きな変革をもたらしています。人工知能についての詳細情報や、ヘルスケア事業者が現在の課題を克服し、実行可能なAIソリューションを創出する方法について、ポッドキャストでディスカッションしています。