これからのSaMDやIoMTのソリューションに欠かせない、医療分野の相互運用性

Lyndon McPhail

by Lyndon McPhail

医療データの相互運用性がもたらすメリット R336cm

相互運用性の確保は、現在そして将来の医療にとって非常に重要な取り組みです。医療分野におけるAI技術が発展するなか、とくに価値に基づく医療や予測医学を推進する上で、相互運用性は重要な役割を果たしていくでしょう。何百万ものデータを利用できるようになることで、研究者や医療専門家、ポピュレーションヘルスに取り組む組織などは、患者個人および地域レベルの両方において、新たな疾病の発生を示す兆候をもとに、健康に関する潜在的な懸念を予測できるようになります。それにより医療機関は、事後対応ではなく、前もって治療の計画や準備を行えるようになります。

医療分野の相互運用性には、単なる技術用語や法的義務以上の意味があります。相互運用性は患者さんの健康にメリットをもたらし、ヘルスケア企業はさらなる価値の提供、収益の向上、コストの削減を実現できるようになります。それにより、人々の命を救う数々の機会が生み出されるでしょう。

医療分野の相互運用性がもたらす現実的な影響

10年前、ある病院の緊急治療室に1人の患者さんが運び込まれました。その人は入院して数日間治療を受け、退院しました。しかし、その後、その患者さんが抱える疾患に対して禁忌とされる薬が処方されていたことが判明しました。もし、患者さんがこの薬を服用し続けていたら、深刻な結果を招いた可能性があります。相互運用性が確立される以前は(今でもまだありますが)、そのようなことはよくある話でした。

医療システムの相互運用化の取り組みにより、その病院は診察・検査・退院時の報告など、あらゆる報告書を医師の電子カルテ(EMR)に直接送信できる仕組みを開発していました。

従来は手入力とファクス送信により、かかりつけ医が入院の報告を受けるまで2週間かかっていたのが、新しいシステムでは退院の翌日には報告書が届くようになりました。その結果、先ほどの例でも、医師は問題の重大さをいち早く認識し、直ちに薬の服用を中止するよう患者さんに連絡できたのです。

もし、さらに完璧な相互運用性が実現されていれば、次のような対応ができたでしょう。

1. 患者さんは自らの健康記録にアクセスして、病院にデータを提供できた。

2. 病院側でも患者さんの主要な健康情報に直接アクセスして、禁忌の薬が処方されることを避けられた。

3. かかりつけ医は、自分の患者が入院したという報告をいち早く受けて、より適切に対応できた。

詳細をご覧ください

Starのヘルステック部門より、相互運用性についての重要な見識をお伝えしています。

最近の記事を読む

患者さんによるデータへのアクセスと「サークル・オブ・ケア」の重要性

相互運用化の取り組みを成功させるには、まず患者さんの「サークル・オブ・ケア」を理解する必要があります。サークル・オブ・ケアとは、簡単に言えば、現在または過去にその患者さんと関わりがあった、すべての医師、専門家、医療施設を指します。そこではサークル内の各関係者が患者さんの健康状態を正確に把握し、チーム全体で情報を共有することが重要になります。

近年では、患者さん自身がサークルの一員としての役割を果たすことで、健康状態が改善されるという結果も報告されています。患者さんがデバイスやポータルサイトを通じて、健康データを関係者に提供することで、サークル内での情報共有が実現されます。その情報を個別の臨床管理システムから、臨床データリポジトリに送ることで、医療システムの効率化やコストの削減、患者さん自身の健康状態の改善につながっていきます。

そこでは接続性と、医療分野のIoT(IoMT)やプログラム医療機器(SaMD)サービスの充実が、アクセスしやすく、公平、安価、効果的な医療を実現する上での重要なポイントとなります。つまり、機器間の通信やデータのやり取り、より上位のテクノロジーシステムとの連携が必要になってくるのです。

医療機器における相互運用性の重要性を理解する

世界的な高齢化の進展に伴い、医療提供においても、機器のインターネット接続と安全なデータ共有がますます不可欠になっています。健康関連データはもとより秘匿性が求められ、プライバシーやセキュリティを確保するための強力なアクセス管理が必要です。同時に、それを本当に必要とする人々がアクセスしやすく、理解しやすいものにする必要もあります。これらをいかに両立させるかが、重要なポイントとなります。

また、相互運用性が不十分であれば、個人や集団の健康データが適切に解釈されず、コストの増加、非効率性、健康状態の悪化につながる恐れがあります。

JP

米国では「21世紀の治療に関する法律(21st Century Cures Act)」の成立以来、ヘルスケア業界における相互運用性は向上しつつあります。ただ、2022年12月31日の期限までに、改定された認証基準に適合し、新しい機能を提供するためには、IT開発者にはまだやるべきことが多く残されています。その最たるものが、患者および住民へのサービス提供に向けて新たに標準化された、FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)APIへの対応です。

相互運性のメリットは、法令遵守にとどまりません。FHIR APIは、臨床分野や組織の枠を超えたデータへのアクセスを容易にし、革新的なソフトウェア開発の基盤となるものです。それにより、医療提供者、保険者、ヘルスケア企業は、新しい方法で患者さんのデータを利用してケアを管理できるようになります。患者さんも自身のデータに簡単にアクセスして、情報を1つ(または複数)のアプリに集約できるようになります。

相互運用性と、ネットワーク接続されたソフトウェアの活用は、医療提供者が患者さんの健康状態をより正確に把握できるようにするだけでなく、業界全体にメリットをもたらします。連携のしやすさにより、企業はサービスの利用率や需要をより正確に理解できるようになり、ライフサイエンス関連機関は、堅牢なデータセットを活用して、より多くの情報に基づいた研究を行えるようになります。各分野の意思決定者は、ユーザーの健康情報へのアクセス方法や利用状況を把握して、より良い製品開発を推進し、サービスや有効性、安全性を高められます。

医療分野における相互運用化の実例

相互運用性とAIやIoMTの組み合わせは、医療関係者に大きなメリットをもたらします。例えば、Starがとくに力を入れている仕事のひとつに、「エイジング・イン・プレイス(高齢者が住み慣れた場所で暮らすこと)」を推進する欧州の介護事業者との継続的な共同プロジェクトがあります。そこでは高齢のユーザーは移動に不自由があったり、新しい技術を使いこなせなかったりすることが多いため、私たちはユーザーが操作を行う必要のないシステムを開発しようと考えました。

そして、センサーやウェアラブル機器、遠隔監視ツール、自宅内の受動的装置からデータを収集する、AIを活用したIoMT接続プラットフォームを構築しました。これらのデータはすべて、自宅内の1つのゲートウェイに送信されます。このデータを解釈して、医療従事者向けに重要な情報を合成するアルゴリズムも開発しました。

Interoperability_2-1

これにより、介護者は膨大なデータに振り回されることなく、明快な情報を得て、患者さんを適切に見守れるようになり、必要に応じて救急機関への報告や引き継ぎも行えるようになりました。このプラットフォームのリリース後2年間で、入院が80%減少し、ユーザーの満足度は97%に達しています。

このプラットフォームは、医療提供者と患者さんの双方にメリットをもたらします。ユーザーはそれがあることを意識しないで、ストレスなくシステムを活用でき、医療提供者は1つのダッシュボードを監視するだけで、患者さんの詳細な情報を把握できます。プラットフォームは無限に拡張可能な設計であるため、新たな機器が登場しても容易に対応できます。

プラットフォームがさらに進化すれば、予測的なケアが可能になるでしょう。すでにバイオマーカー(生理学的指標)を長期的に追跡して、介入が必要な時期を提案する機能が開発されています。何百万人の患者さんからのデータが相互利用可能になれば、例えば、 歯周病の増加を検出することで、それを原因として発生する心臓発作を防げるかもしれません。その他にも、患者さんの健康状態を向上させる方法は無数に考えられます。

相互運用性、予測医学、ヘルスケアの未来

医療データの相互運用性は、単なる要件ではなく、大きなチャンスです。私たちはまだ相互運用可能な医療プラットフォームの利点に、ほんの少し触れたに過ぎません。患者さんの自己管理に必要なデータとの接続、医療提供者のワークフローの効率化、ヘルスケア企業が価値主導のソリューションを生み出す機会の創出など、期待されるメリットは数多くあります。

Starのヘルステック部門は、メドテック(医療テクノロジー)やデジタルヘルスケアを革新する最前線に立っています。業界を代表するヘルスケア企業や、破壊的革新をもたらすスタートアップ企業と協働して、相互運用性、拡張性、安全性、ユーザー中心の医療ソフトウェア、医療用デジタルアシスタント、プログラム医療機器(SaMD)、デジタル治療(DTx)、医療機器ソフトウェアなどをテーマに、画期的なソリューションの創出に取り組んでいます。トレンドやテクノロジー、製品開発戦略について、ぜひ最新の記事をご覧ください

お問い合わせください

相互運用可能なプログラム医療機器(SaMD)の開発について、ぜひStarのヘルステック部門にご相談ください。

関連トピック

シェア

医療データの相互運用性がもたらすメリット R2r96cm
Lyndon McPhail
Starヘルステック部門プロダクトマネージャー

Starのヘルステック部門プロダクトマネージャーとして、医療分野のIT、相互運用性、データ、その他の先端技術に関する知識を活かし、世界的なクライアントが画期的なメドテックやデジタルヘルスケアソリューションを構想、設計、開発できるよう支援。システムインテグレーション(HL7、API)を専門とし、20年以上にわたって病院システム、電子カルテ、臨床意思決定支援ツールの開発や改善に取り組んでいる。

ビルダーのグローバルチームであるStarは、戦略、デザイン、エンジニアリングのサービスをシームレスなワークフローへとつなぎ、洞察力に優れたソリューションを構築して、的確なインパクトや拡張性、パフォーマンスを提供します。

インサイト&インスピレーション

Starからの最新のインサイトや業界の注目情報が、受信トレイに届きます。

Loading...

連絡先

または、hellostar@star.globalまでメールでご連絡ください

minusplusloadercrossplusarrowarrow-downfacebooktwitterlinkedininstagramquotefilter-arrfilter-not-choosenfilter-choosenbell