これからのSaMDやIoMTソリューションに欠かせない、医療分野の相互運用性

Lyndon McPhail

by Lyndon McPhail

医療データの相互運用性がもたらすメリット R1hbapm

医療分野での相互運用性には、単なる技術用語や法的義務以上の意味があります。相互運用性を確保することで、患者さんの健康に大きなメリットがもたらされ、ヘルスケア企業はさらなる価値の提供、収益の向上、コストの削減を可能にする無数の機会を生み出せます。データが相互運用可能となることで、医療提供者はケアの現場でより良い判断を下せるようになり、患者さんの健康状態の改善につながります。人々の命を救う機会も数多く生まれるでしょう。

本記事では、相互運用性について知っておくべきことを解説します。その利点、規制対応において考慮すべき点、市場をリードする製品の事例を紐解き、製品・技術戦略を強化する方法を探っていきます。

医療・ヘルスケア分野における相互運用性とは?

10年前、ある病院の緊急治療室に1人の患者さんが運び込まれました。その人は入院して数日間治療を受け、退院しました。しかし、その後、その患者さんの持病に対して禁忌とされる薬が処方されていたことが判明しました。もし、患者さんがこの薬を服用し続けていたら、生死に関わる深刻な事態を招いた可能性があります。相互運用性が確立される以前は、このような事例が頻繁に発生していました。

幸いなことに、その病院では、当時から電子健康記録(EHR)の相互運用に取り組み始めていました。それにより、患者さんのかかりつけ医に個別に報告書をファクスで送るという旧来の方法に代わり、診察・検査の報告書、退院時の要約書など、あらゆるレポートを医師の電子カルテ(EMR)に直接送信できる仕組みを開発していました。つまり、医療エコシステムの変革に取り組んでいたのです。

手入力とファクス送信という従来の方法では、かかりつけ医が患者さんの入院の報告を受けるまで2週間かかっていましたが、新しいシステムでは退院の翌日には報告書が届くようになりました。その結果、先ほどのケースでも、かかりつけ医は問題の重大さをいち早く認識し、直ちに薬の服用を中止するよう患者さんに連絡できたのです。

もし、さらに完璧な相互運用性が実現されていれば、次のような対応ができたでしょう。

1. 患者さんが自らの健康記録にアクセスして、病院にデータを提供できた。

2. 病院側でも患者さんの主要な健康情報に直接アクセスして、禁忌の薬が処方されることを避けられた。

3. 患者さんの主治医は、自分の患者が入院したという報告をいち早く受け取って、より適切に対応できた。

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患者さんから医療提供者、管理者、システム、業界企業まで、あらゆる医療関係者に相互運用性は次のようなメリットをもたらします。

  • 連携の向上:重要な情報へのアクセス性が向上することで、同じ検査を繰り返す必要がなくなり、コミュニケーションの行き違いも防げます。複数の治療から生じる有害な相互作用を回避でき、コスト削減にもつながります。
  • パフォーマンスの向上:データへのアクセス性が良くなることで、分析力も向上。データを活用して、ワークフロー全体の改善を図れます。
  • エクスペリエンスの向上:患者データへの迅速かつ完全なアクセスにより、無駄の多い管理作業が減り、医療提供者と患者さんのエクスペリエンスが向上します。
  • 患者さんの自主性の向上:自身のデータにアクセスできることで、患者さんは自分の健康に対してより大きな役割を担えるようになり、自己管理や在宅医療が促進されます。
  • 機密データの保護:電子化された情報が自動的に共有されることで、データへのアクセスを適切に管理できます。アクティビティの監査や手動処理も可能であるほか、安全でない方法でのデータ送信も回避できます。

ここに挙げたのは、相互運用性の重要性を示すメリットの一部に過ぎません。相互運用性を単に義務だと考えるのではなく、自社のサービスをチューンアップし、他社との差別化を図る大きなチャンスとして捉えることを、私たちはお客様企業に強くお勧めしています。

相互運用性による、患者さんのアクセス性と「サークル・オブ・ケア」の向上

世界的に高齢化が進むなか、医療・ヘルスケアサービスを提供するにあたって、コネクテッドデバイスと安全なデータ共有の重要性が増しています。もとより慎重に扱うべきものである健康データには、プライバシーとセキュリティを確保するためのアクセス制御が求められます。同時に、それを必要とする人々が利用しやすく、理解しやすいものでなければなりません。これらをいかに両立させていくかが課題です。

相互運用性がなければ、個人や集団の健康データを十分に解釈できず、コスト増、非効率性、健康状態の悪化につながる恐れがあります。

相互運用化を成功させるには、まず患者さんの「サークル・オブ・ケア」を理解する必要があります。サークル・オブ・ケアとは、簡単にいうと、現在または過去にその患者さんと関わりがあった、すべての医師、専門家、医療機関を指します。すなわち、サークル内の各関係者が患者さんの健康状態を正確に把握し、チーム全体で情報を共有することが重要になります。

患者さん自身もサークルの一員としての役割を担うことで、健康状態が改善されるという結果が報告されています。患者さんがデバイスやポータルサイトを通じて、健康データを関係者に提供することで、サークル内での情報共有が実現されます。その情報を個別の臨床管理システムから、臨床データリポジトリに送って集約することで、医療システムの効率化やコストの削減、患者さんの健康状態のさらなる改善につながっていきます。

そこでは接続性と、IoMT(医療分野のIoT)やSaMD(プログラム医療機器)サービスの充実が、アクセスしやすく、公平、安価、効果的な医療を実現する上での重要なポイントとなります。

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相互運用性に関する規制基準とコンプライアンス

米国では「21世紀の治療に関する法律(21st Century Cures Act)」の成立以来、相互運用性が向上してきています。ただ、2022年12月31日の期限までに、医療・ヘルスケア分野のIT開発者が、改定された認証基準に適合した新しい機能性を提供するには、まだやるべきことが多く残されています。その最たるものが、患者および住民へのサービス提供に向けて新たに標準化された、FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)APIへの対応です。

相互運用性のメリットは、法令遵守にとどまりません。臨床分野や組織の枠を超えてデータへのアクセスを容易にするFHIR APIは、革新的なソフトウェア開発の基盤となるものです。それにより、医療提供者、保険者、ヘルスケア企業は、新しい方法で患者さんのデータを利用してケアを管理できるようになります。患者さんも自身のデータにアクセスしやすくなり、情報を1つ(または複数)のアプリに集約できるようになります。

ネットワーク接続されたソフトウェアを相互運用することで、医療提供者が患者さんの健康状態をより正確に把握できるようになり、業界全体にもメリットがもたらされます。企業はサービスの利用率や需要を精度よく理解でき、ライフサイエンス関連機関は、堅牢なデータセットを活用して、より多くの情報に基づいた研究を行えるようになります。また、各分野の意思決定者は、ユーザーがどのように健康情報を利用しているのかを把握して、サービスや有効性、安全性を高めたより良い製品を開発できます。

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医療・ヘルスケア分野での相互運用性:Starの事例をご紹介

相互運用性とAIやIoMTを組み合わせることで、医療関係者に大きなメリットがもたらされます。医療分野での相互運用性の事例は、Starの最近の仕事でも多く見られます。例えば、Starがとくに力を入れている仕事のひとつに、「エイジング・イン・プレイス(高齢になっても住み慣れた場所で暮らすこと)」を推進する欧州の介護事業者との継続的な共同プロジェクトがあります。高齢のユーザーは移動に不自由があったり、新しい技術を使いこなせなかったりすることが多いため、私たちはユーザーが操作を行う必要のないシステムを開発しようと考えました。

そして、センサーやウェアラブル機器、遠隔監視ツール、自宅内の受動的装置からデータを収集する、AIを活用したIoMT接続プラットフォームを構築しました。データはすべて、自宅内の1つのゲートウェイに送信されます。このデータを解釈して、医療従事者向けに重要な情報を構成するアルゴリズムも開発しました。

これにより、介護者は膨大なデータに振り回されることなく、明快な情報を得て、患者さんを適切に見守れるようになり、必要に応じて救急機関への報告や引き継ぎも行えるようになりました。このプラットフォームのリリース後2年間で、入院が80%減少し、ユーザーの満足度は97%に達しています。

このプラットフォームは、医療提供者と患者さんの双方にメリットをもたらします。ユーザーはそれがあることを意識しないで、ストレスなくシステムを活用でき、医療提供者は1つのダッシュボードを監視するだけで、患者さんの詳細な情報を把握できます。また、プラットフォームは無限に拡張可能な設計であるため、新たな機器が登場しても容易に対応できます。

プラットフォームがさらに進化すれば、予測的なケアも可能になるでしょう。すでにバイオマーカー(生理学的指標)を長期的に追跡して、介入が必要な時期を提案する機能が開発されています。何百万人の患者さんからのデータが相互利用可能になれば、例えば、 歯周病の増加を検出することで、それを原因として発生する心臓発作を防げるかもしれません。その他にも、患者さんの健康状態を向上させる方法は無数に考えられます。

相互運用性、予測医学、ヘルスケアの未来

医療データの相互運用性は、単なる要件ではなく、大きなチャンスです。私たちはまだ相互運用可能な医療プラットフォームの利点に、ほんの少し触れたに過ぎません。患者さんの自己管理に必要なデータとの接続、医療提供者のワークフローの効率化、ヘルスケア企業が価値主導のソリューションを生み出す機会の創出など、期待されるメリットは数多くあります。今こそ、これらのテーマに優先的に取り組むべき時です。

Starのヘルステックチームは、デジタルヘルスケアの時代における組織や製品の最新化、進化、構築、革新を支援しています。詳しくは、こちらからStarの専門チームにお問い合わせください。

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Starヘルステック部門プロダクトマネージャー

Starのヘルステック部門プロダクトマネージャーとして、医療分野のIT、相互運用性、データ、その他の先端技術に関する知識を活かし、世界的なクライアントが画期的なメドテックやデジタルヘルスケアソリューションを構想、設計、開発できるよう支援。システムインテグレーション(HL7、API)を専門とし、20年以上にわたって病院システム、電子カルテ、臨床意思決定支援ツールの開発や改善に取り組んでいる。

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