概要
テクノロジーはフリート(商用車)の管理に革命をもたらし、担当者のほぼすべての仕事を効率化する様々なソフトウェアが続々と登場しています。Starの自動車&モビリティチームは、この成長分野を牽引するユーザーニーズと技術動向を把握するために調査を実施。運行の安全性、情報セキュリティ、持続可能性、相互運用性など主要カテゴリーにおいて、世界のフリート管理ソフトウェアを分析しました。そこから得られた知見をご紹介します。
フリート管理とは、生産性の向上、コスト削減、顧客やドライバーの体験の向上などを目的として、商用車のパフォーマンスとメンテナンスを管理するプロセスを指します。今、車両管理戦略として、車両メンテナンスなどに対応するフリート管理ソフトウェアや車両テレマティクスを活用する企業が増えています。Verizon Connectのレポートによると、業界でフリート追跡技術を使用する企業は、2019年の64%から2020年には72%へと増加。GPS対応のフリート追跡ソフトウェアを使用している企業の96%がメリットを感じており、具体的に燃料、人件費、事故コストの減少を主な利点として挙げています。
パンデミックにより、商用車の所有者・管理者は、コスト上昇を始めとする新たな課題に直面しました。それに対応する形でフリート管理プラットフォームの開発が進み、今ではテクノロジーを活用して、メンテナンス計画、検査、配車、請求書発行、ドライバーの安全確保など、ほぼすべてのフリート管理業務を合理化・自動化できるようになっています。フリート管理のテクノロジーとサービスの現状を分析したStarの調査では、そのような機能を10のカテゴリーに分類。提供各社に共通して見られる機能と独自の機能を選別し、サービスの実例を紹介しています。フリート管理の市場分析レポートでは、そのすべてのカテゴリーと機能をご覧いただけます。今回はその中から3つのポイントをご紹介します。
持続可能なフリート管理ソリューションに商機あり
世界中の企業が二酸化炭素排出量の削減を誓うなか、フリート管理においても、持続可能性を向上させ、車両電動化に対応する機能への需要が高まることが予想されます。ただ現状では、Starが分析した42社のテクノロジー企業のうち、EVの持続可能性評価、充電状況のリアルタイム情報、持続可能性レポート、EV専用のルート計画などの機能を提供しているのは、ごく一部にとどまっています。米国では1600万台以上の公共/民間の商用車が走行しており、Electrification Coalitionのレポートでは、ガソリンエンジン車をEVに置き換えることで、地球環境の改善に多大なインパクトを与えられるとしています。英国でも新車登録台数の60%を商用車が占めており、政府もEVへの切り替えを促す政策とインフラ投資を進めています。このような背景から、電気自動車を導入する企業はますます増え、電気自動車のフリート管理に対応する新しいテクノロジーソリューションが続々と登場してくると考えられます。
データドリブンなフリート管理が勢いを保つ
企業はデータ管理ツールを導入して、メンテナンス、運転手のトレーニング、安全確保、ルート最適化、コミュニケーション、持続可能性、コンプライアンス、物流管理など、フリート管理業務のあらゆる領域で意思決定を向上させようとしています。例えば、Avriosは、データに基づいたフリート保守管理ソフトウェアなどにより、事故報告から修理見積もりまであらゆる情報を追跡し、科学的な損害管理を実現しようとしています。AI(人工知能)やML(機械学習)によりデータを高いレベルで活用して、スマートなフリート管理を目指すプラットフォームもあります。例えば、Smartの車載カメラは、AIやMLを使用して、車内および道路の様子を撮影・監視。補助カメラと組み合わせて、側面や後方の映像も処理します。
フリート管理ソフトウェアの相互運用性も、重要度を増しています。フリート管理プラットフォームが他のデータやソフトウェアとうまく連携できれば、企業は事業領域やプラットフォーム間を横断してツールやデータを統合でき、新しい洞察の発見や効率化の実現につながるでしょう。
リアルタイム警告とルートマップが重要なトレンドに
ほぼすべてのフリート管理ソフトウェアは、センサーがドライバーの注意散漫な運転行動を検出すると警告を発する、リアルタイムアラート機能を搭載しています。例えば、商用・公共・現場作業用の車両にマシンビジョン(MV)と人工知能(AI)ソリューションを提供するLytxは、光と音声を使ったリアルタイムのアラートにより、ドライバーの集中を持続させ、注意力低下を防ぎます。産業用IoTソリューションのリーダー企業であるSamsaraは、あおり運転、スピード違反、シートベルト不着用などを検出するよう管理者がカスタマイズできる、音声アラート機能を提供しています。Gomotiveのスマートフリート管理ソリューションでは、リスクの高い行動をAIがリアルタイムで検出し、運転中の疲労や注意散漫、スピード違反、交通違反、車線逸脱、スマートフォンを見ながらの運転などに対する警告やアラートを発出できます。
ルートの最適化も、車両運行管理において重要なポイントです。そのため各社は共通してフリート追跡マップ機能を搭載し、ほとんどのベンダーが車両の現在地を視覚化するツールを提供しています。AutomileのGPSフリート追跡機能は、時間帯や交通状況などの情報に基づいてルートを自動的に更新。運行管理者は、モバイルアプリやテキストメッセージ、電子メールを通じて運転手にルートを共有できます。
まとめると、EV対応ツール、AI・ML、クラウドベースの遠隔管理、データに基づいた管理と高度な分析、他のプラットフォームとの統合などが、各社に共通して見られる重要な機能となっています。また、希少な機能にも注目する価値があります。Starのレポートでは、一部のテクノロジープロバイダーのみが提供している貴重な機能を多数明らかにしています。差別化に貢献しているこれらの機能からは、関連する機能やサービスへのインスピレーションも得られるでしょう。
フリート管理機能を検討する際には、技術的なトレンドに加えて、会社や担当者の困りごとに着目することが効果的です。Starは人間中心のデザインに基づいて、総合的なモビリティ体験をもたらす革新的なデジタル製品をお客様企業が創出できるよう支援しています。コネクテッドビークルソフトウェア、ユーザーエクスペリエンスデザイン、モビリティアプリ、診断・メンテナンスソリューションなどに専門的に取り組むStarは、成長するデジタルフリート管理の世界に貢献できる独自の立場にあります。Starのサービスや、レポートで紹介しているフリート管理のトレンドの詳細について、ぜひお問い合わせください。