自動車業界は急速に変化しており、それに伴い自動車向けアプリ開発も変化しています。テクノロジーの進化に伴い、特にZ世代の間では、スマートフォンと自動車を連携させ、ドライバーにシームレスでパーソナライズされた体験を提供する、統合型デジタル体験への需要が高まっています。
こうした車載アプリへの需要が高まる中、自動車メーカー(OEM)は、これらのアプリをどのように効果的に開発・展開するかという重要な判断を迫られています。
自動車向けアプリ開発の今後を探るため、Starの専門コンサルタントに、現場で培った知見と今後の見通しを聞きました。
彼らの見解からは、今後5年間で市場がどこへ向かうのかが明確に見えてきます。
自動車向けアプリ開発の課題
自動車向けアプリの開発には、さまざまな課題があります。StarのデザインディレクターであるAdrian Waibelによると、大きな課題の1つは、アプリがユーザーに実質的な価値を提供できるようにすることです。多くのOEMは、ユーザーにとって意味のある形で利便性を高める機能の開発に苦戦しています。自動車向けアプリは、単に機能するだけでは不十分です。実際の課題を解決したり、ドライブ体験を向上させたりすることで、ユーザー体験を改善する必要があります。
自動車を取り巻くエコシステム全体が複雑化していることも、この課題を難しくしています。Adrianが指摘するように、スマートフォン、スマートホーム、さらにはスマートシティなど、既存のデジタルエコシステムとアプリをシームレスに連携させる必要があります。自動車が高度化するにつれて、このような相互に連携した体験の重要性も高まっています。
さらに、StarのシニアUX/UIデザイナーであるEkaterina Glebovaは、こうしたアプリで扱うデータ量が増え続ける中、その管理が複雑化している点を指摘しています。機能やデータ量が増えても、アプリが直感的で使いやすいものであり続けるよう、デザイナーは配慮する必要があります。
目指すのは、ユーザーに負担を感じさせることなく、幅広い機能を提供することです。
自動車向けアプリ:今後のトレンド
2030年までに、新車の約95%がコネクテッドカーになると予測されています。2020年の50%から大幅な増加です。自動車向けアプリ開発で生じる課題を見てきたところで、次はOEMが今後直面するトレンドと、その対応方法を見ていきましょう。
1.ハイブリッドアプローチ
自動車向けアプリ開発では、「スタンドアロン型か、ウェブベース型か」が大きな論点となっています。どちらが優れた選択肢なのでしょうか?
Starで東欧地域のデザイン責任者を務めるAlexander Debkaliukによると、ネイティブソリューション、つまりiOSやAndroidなどのモバイルOS向けに専用設計されたアプリは、優れたパフォーマンスとデバイスの機能を最大限に活用できる点から、OEMに好まれています。ネイティブアプリは、より高度な機能、優れたセキュリティ、車両システムとのスムーズな連携を実現できるため、多くのOEMにとって有力な選択肢となっています。
そうはいっても、ウェブベースのアプリにも独自のメリットがあります。Ekaterinaは、ウェブベースのアプリには、コストを抑えやすく、更新が容易で、複数のプラットフォームに対応できるという利点があると指摘しています。
一方で、ウェブベースのアプリには、パフォーマンスが劣ることや、一部のデバイス固有の機能を利用できないといった制約もあります。それでも全体としては、柔軟性が高く、複数のプラットフォームに対応しやすいソリューションです。
つまり、スタンドアロン型かウェブベース型かという問いに、どちらか一方という答えはありません。両方です!今後は、この2つのアプローチを組み合わせたハイブリッドアプリへと向かっていくと考えられます。これにより、OEMは高まる消費者ニーズに応えながら、コスト、パフォーマンス、機能性のバランスを取ることができ、両方式の利点を活かせます。
Ekaterinaはさらに、プログレッシブウェブアプリの普及や、ユーザー体験を向上させるためのAIと機械学習の活用が進むと予測しています(詳しくは後述します)。
2.スーパーアプリの台頭
今後、自動車向けアプリの分野では、車両管理にとどまらず、幅広いサービスや機能を統合して提供するスーパーアプリの登場が大きな動きになると考えられます。
日常のさまざまなタスクを簡単にこなせるオールインワン型のサービスへの需要が高まる中、Ekaterinaは、自動車向けアプリにEC、保険管理、SNS機能など、幅広いライフスタイルサービスが組み込まれていくと予測しています。スーパーアプリは、自動車業界で今後中心的な存在になると考えられます。
Adrianも、スーパーアプリを、ライフスタイル機能と自動車の主要機能を統合する手段と捉えています。例えば、整備の予約やアクセサリーの注文です。駐車スペースを探してくれるアプリも考えられます。
こうしたスーパーアプリは、自動車と日常生活の両方を管理する中核的なハブとなり、そのすべてをシームレスなユーザー体験でつなぐようになるでしょう。
3.AIとARによるイノベーション
先日のCES 2025で特に印象的だったのは、AIがあらゆる分野に浸透しているという点です。これは自動車向けアプリ開発にも当てはまります。StarのデザインディレクターであるAlex Mukomelovによると、AIとARソリューションの統合によって、ドライブ体験は大きく向上すると考えられます。
AI搭載アプリは、ドライバーのニーズを先読みし、目的地を予測し、日常のさまざまなタスクを支援するようになります。一方、ARは車内ナビゲーションを大きく変える可能性があり、状況認識を高める没入感のあるリアルタイムガイダンスを提供できます。
例えば、世界初の車載コンパニオン「NOMI」は、Starと中国の電気自動車メーカーNIOが共同開発したものです。
NOMIは高度なAIを活用して自動車とドライバーの間に感情的なつながりを生み出し、AIによるイノベーションが今後の自動車向けアプリ開発にもたらす可能性を示しています。
パーソナライズも重要な推進力となるでしょう。昨年の北京モーターショーでは、カスタマイズを求める消費者ニーズが大きく取り上げられていました。今後の自動車向けアプリでは、インフォテインメントの設定やスマートホームとの連携など、ドライバーが好みに合わせて車内環境を調整できるようになります。こうしたカスタマイズは、一人ひとりのライフスタイルに合わせて変化する、モジュール式のユーザー中心設計によって実現されます。
4.完全に統合された体験
今後5年ほどの間に、自動車向けアプリを取り巻く環境はさらに進化していくでしょう。Alexander Debkaliukによると、OEMは、コンパニオンアプリと、それを車内体験につなぐために必要なインフラへの投資を拡大していくと考えられます。
アプリの役割が広がるにつれて、OEMはサードパーティのサプライヤーだけに頼るのではなく、こうしたソリューションを自社開発する方向に進むと考えられます。
スーパーアプリへの移行もさらに進み、消費者の期待に応えるため、より幅広いサービスが提供されるようになるでしょう。Alex Mukomelovは、自動運転車の普及によって、自動車がエンターテインメント、仕事、さらには人との交流までを融合した多機能空間へとさらに変化すると予測しています。
こうした新しい環境では、モバイルアプリが、自動車とそれを取り巻く広範なデジタルエコシステムの両方を管理する中心的な役割を担うようになるでしょう。
自動車向けアプリ開発のポイント
- ハイブリッドアプリ:自動車向けアプリの今後は、ネイティブアプリとウェブベースアプリそれぞれの強みを組み合わせ、パフォーマンス、コスト、セキュリティのバランスを取るハイブリッド型が主流になると考えられます
- シームレスな連携:自動車システムの複雑化に伴い、スマートフォンやスマートホームなど、より広範なデジタルエコシステムとシームレスに連携するアプリが必要になります
- スーパーアプリ:自動車向けアプリは、車両管理とECやSNSなどのライフスタイルサービスを統合した、包括的なプラットフォームへと進化していくと考えられます
- AIとAR:次のイノベーションの波では、AIとARを活用することで、よりパーソナライズされ、没入感が高く、直感的なドライブ体験が実現されるでしょう。
- 消費者中心のデザイン:成功の鍵は、実際のニーズに応え、シームレスで魅力的な体験を提供するアプリを通じて、ユーザーに真の価値を提供できるかどうかにあります
OEMが自動車向けアプリ開発への投資を続ける中、今後5年間で、人と自動車との関わり方を大きく変える新たな機能が次々と登場するでしょう。
成功の鍵となるのは、パーソナライズと連携を重視し、ドライブ体験全体を向上させる、実用的で直感的なツールを提供することです。
自動車向けアプリ開発を成功させることは、自動車&モビリティ業界で競争優位を築くための1つの方法にすぎません。競合他社に大きく差をつけることはできますが、それだけで業界のリーダーになれるわけではありません。業界リーダーになるには、世界の自動車業界が現在直面している、さらに幅広いトレンドも把握しておく必要があります。そうしたトレンドについては、以下のオンデマンドマスタークラスでご覧いただけます。







