Starがお届けするポッドキャスト「Shine」で、MedTech(メドテック)に取り組む企業が知っておくべき、医療機器への規制、鍵を握るテクノロジー、そして製品を市場に投入する際の最適なアプローチについてディスカッションを行いました。
メドテック分野は急速に進化しています。人工知能、音声アシスタント、クラウドストレージ、拡張現実(AR)といった革新的なテクノロジーの登場により、医療機関やヘルスケア企業は、これまで以上に、価値に基づいた医療の提供、患者さんのアウトカムの向上、ワークフローの最適化に取り組めるようになっています。
企業が、このようなメドテック技術の可能性を最大限に引き出し、さまざまな規制に対応していくには、新しいアプローチやビジネスモデルが必要です。そこで、今回のポッドキャストエピソードでは、メドテックの製品やサービスを数多く市場に送り出している3名の業界リーダーを迎え、メドテックに取り組む企業が、現在そして将来の成功に向けて採るべき戦略について、各人の知見をもとにディスカッションを行いました。
医療機器開発における課題
ディスカッションでは、まずメドテック企業が現在直面している主な課題に目を向けました。最大の課題は、EU医療機器規則(MDR)やFDAのプログラム医療機器ガイドラインに準拠して開発を行わなければならないことです。その上で、次のようなポイントも重要になってきます。
- ミスや中断が許されないソフトウェアの開発:メドテック製品は、それ自体の設計に技術が求められるのはもちろん、インターネット接続された各種機器やエンドユーザーとの通信、法令を遵守したデータの取り扱い、大規模な医療システムへの組み込みなどにおいても、極めて専門的な技術を要するとTomaszは語ります。
- 医療目標の達成と相互運用性の実現:Stefanは、企業は多面的な目標を達成しなければならないとして、「医療的な診断・治療の目的を達成すると同時に、現在利用されている医療機器と相互に連携できる製品やサービスを迅速に市場に投入する」ことが重要だと話します。
- モジュール型プロダクトの開発:Davidは、医療用ソフトウェアの開発はモジュール化されたプロダクトを生み出す機会になるとして、「システムの変更を迫られた際に、全体を作り直すのではなく、柔軟に対応できるようにするために」、医療機器と非医療機器の境界を知ることが重要だと指摘しています。
- 新しいビジネスモデルの策定:既存の機器の多くは、デジタルヘルスの時代以前に開発されたものです。Tomaszは、「これからはインターネット接続されるコネクテッドな世界を見据えたビジネスモデルを構築することで、エンドユーザーと医療機関の両方に貢献できる」と強調しています。
- ユーザー中心の思考:さまざまな目標を追いかけるあまり、最終的に製品やサービスを使うのは誰かという視点を忘れがちです。Davidはこう話します。「最終的に利用するユーザーを見失ってはいけません。ワークフローが複雑になると、うまくいかない恐れもあります。設計の初期段階から、いかにユーザーを惹きつけ、円滑に利用できる製品にするかを考えておくべきです」
Apple Podcastで登録する | Spotifyで登録する
ポッドキャストは英語で提供しています
ヘルスケアの新たな可能性を開拓する
ハードウェアからソフトウェアへと焦点が移行しつつあるメドテック分野では、新興企業にも既存企業にも、新しい技術やケアモデルを取り入れた製品開発の機会が訪れています。
チャンスをものにするには、革新的かつ大胆な視点で患者さんの利用プロセス全体を見渡し、医療機関をはじめとする関係者に、どのように価値を提供できるかを見極める必要があります。
今、世界の医療システムは重圧にさらされています。Davidは、とくに高齢化社会を支えるインフラの構築に今すぐ着手しなければならないと言います。「自宅での医療を実現していく必要があります。そうすることで、より良いケアや予防につながるだけでなく、より切迫した状況にある人々へのリソースも確保できます」
また、Davidは、 将来の医療に向けて、「バラバラに機能するのではなく」、互いに連携するシステムやテクノロジー基盤を構築する必要があると指摘します。「それにより、医療従事者や患者さんに実際に利用してもらえる仕組みになるはずです」
それを実現するのは容易ではありません。たとえば、ビジネスの観点からいうと、このようなツールが採用されるためには、医師の診療報酬に関する法改正が必要です。ただ、幸いなことに、パンデミックを受けて、テクノロジーの導入が加速しています。これからは規制の側でも、テクノロジーの進化への対応が求められていくでしょう。
標準化の進展
メドテック企業は、技術・規制の両面で課題を克服しなければならないという難しい戦いを強いられているものの、ここ数年で大きな進歩があったとStefanは話します。「FHIRが標準規格として広く採用されるなど、技術的な基盤が整備されてきました」
Tomaszは、標準化の利点として、「とくに新規参入のメーカーは、このような仕組みを活用して、患者さんにメリットをもたらす製品を生み出せるようになっている」と述べます。
新しい規制をチャンスと捉える
今年の初め、新しい医療機器規則(MDR)がメドテック界を揺るがしました。これは、機器の分類や範囲の変更、公認機関(Notified Body)による製造者の監視強化、UDI(機器固有識別)の表示義務、市場流通後の監視強化などを求めるものです。
体外用医療機器において、その影響は小さくありません。Tomaszは説明します。「変更前は、体外用医療機器の約75%が自己証明で済みましたが、現在、その割合は約25%にまで減っています」。つまり、メーカーがEUのCEマークを取得したければ、多くの場合、公認機関に製品を持ち込む必要があるということです。
メドテック機器は、品質管理システム下での開発を行ったうえで、改めて独立機関による監査を受けなければならなくなりました。ただ、これは医療機器メーカーにとって短期的には負担となるものの、見方を変えれば、より高品質な製品づくりへの後押しとなり、業界にとって前向きな変化をもたらす力となるでしょう。
メドテック開発のベストな戦略を立てるために
メドテックの開発は複雑です。そのため企業には、規制上の課題の克服と、エンドツーエンドの製品ライフサイクル全体をサポートしてくれるパートナーが必要です。
当社によるPro4Peopleの買収後に収録された今回のポッドキャストエピソードでは、Starのヘルステック部門マネージングディレクターDavid Boxと、規制コンサルティング&テクノロジー部門ディレクターでPro4Peopleの元CEOのTomasz Pukが、当社のヘルステックサービスの拡充について意見を交わしました。
当社は、お客様や社会にさらに大きな価値をもたらすために、この分野の専門知識や規制に関するコンサルティング能力を高め、医療機器の設計・開発から、市場流通後の監視・管理の強化、その先のサポートまでをカバーしています。
ポッドキャストをお聴きいただくと、法令を遵守した、ユーザー中心の医療機器の開発に必要な知識がさらに深まります。Starが手がけたヘルステック分野の事例もぜひご覧ください。