デザインの未来は ストーリーテリングに

Wolfgang Klein

by Wolfgang Klein

プロダクトデザインのためのストーリーテリング — Wolfgang Klein R1hbapm

「ストーリーテリング」という言葉を聞いて、何を思い浮かべるでしょうか? 販売促進のプレゼンやブランディング、動画制作を想像する方もいるでしょう。ただ、ストーリーテリングの活用範囲は、それだけに留まりません。物語には、デザイナーの仕事を変え、社会を動かす力があるのです。

ストーリーテリングの歴史

人類にとって長い間、夜の娯楽といえば夜空を見上げることでした。我々の祖先は点と点をつないで星座を定め、そこから考え出したストーリーを語りました。その頃以来ずっと、人間は物語に親しんできました。そして今、物語が社会でますます重要な役割を果たすようになっています。ここでは、拡大しているストーリーテリングの影響力を示す、5つの形を紹介します。

The long history of storytelling

私たちを取り巻くストーリーテリングの5つの形

その1:ユーザーストーリー

製品や機能、サービスなどのアイデアを伝えたいとき、デザイナーは文章や視覚表現を使ってストーリーを作り、そのビジョンがどのようなものであるかを説明します。

その2:UXライティング

UIの作成は、ボタンをデザインすることだけではありません。インターフェイスを通じてユーザーをガイドする、ナラティブ(語り)の構築も含まれています。

その3:音声UI

SiriやAlexaといった個人向け音声アシスタントの普及が進んでいますが、これはテクノロジーだけでは実現できません。Siriがその状況で何を言うか、どう反応するかを決めるスクリプトを、誰かが書かなければなりません。

その4:人工のパーソナリティ

ソーシャルメディア上で何百万人ものフォロワーを持つ「偽のインフルエンサー」が現れることがあります。オーディエンスは、そのアカウントのパーソナリティは本物でないことに気づきつつも、ストーリーに説得力があるため、関心を向けてしまうのです。

その5:エンターテインメント業界

私たちは人生の約6分の1をテレビを見て過ごしていると言われています。米国のエンターテインメント業界は、ベルギー1国よりも多く、スイス1国よりもやや少ないくらいのお金を生み出しています。このことからも、ストーリーテリングに多大な影響力があることがわかるでしょう。

私たちデザイナーの仕事や、物語が世界経済に大きな影響力があるという事実から、「物語は社会を定義する」というシンプルな真理を導けます。だからこそ、デザイナーはストーリーを重視すべきなのです。

デザイン思考からストーリーテリングへ

この数年間で「デザイン」は大きく変化し、美しさを生み出すグラフィックデザインのような作業から、デザイン思考やコンサルティングへと焦点が移ってきました。そして今、ストーリーテリングを中心とした次の変化が訪れようとしています。Starが最近手掛けた「Nomi」のプロジェクトにも、この変化が反映されています。Nomiは電気自動車のダッシュボードに備わるロボットです。4年前、NIOと連携してこのプロジェクトを始めた際、まず「スマートカー」「HMI」「音声アシスタント」「便利」「プレミアム」「親しみやすい」といったキーワードを集め、それを「機能」と「感情」のカテゴリーに分類しました。そこからストーリーのアプローチを使って、機能と感情が重なり合うポイントを探しました。その重複点を具現化したのがNomiなのです。

From design thinking to storytelling JP

Nomiは2020年のレッドドット・デザイン賞を受賞し、「世界で最も愛らしい車載バーチャルアシスタントのひとつ」として高く評価されました。Nomiが成功した理由のひとつは、感情と機能がシームレスに融合していることです。Nomiは複雑なサービスをシンプルに感じさせるのです。

世界はますます複雑になっており、私たちが使う製品も複雑化しています。そのような状況の中、ストーリーは複雑なものに関連性を与えてくれます。ユーザーが複雑な製品をシンプルで没入感のあるものに感じられたら、デザイナーの仕事として成功だといえるでしょう。デザイン思考からナラティブデザインへの移行が見られる今、ストーリーテリングとデザインの結びつきが強まっています。つまり、デザイナーがストーリーテラーになるべき段階に来ているのです。

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StarはどのようにしてNomiを実現させたのでしょうか。詳細をご覧ください。

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ストーリーテリングを始めるために

先述したように、私たちデザイナーは、ストーリーによって、デザインする製品や関連するユースケースを理解しています。その経験を活かすことで、デザイナーは本当の意味でのストーリーテラーになれるのです。また、ストーリーテリングに関連する分野として文章のライティングがありますが、実際、デザインとライティングの間には多くの共通点があります。重要な点として次のようなポイントが挙げられます。

  • ライティングでもデザインでも、直感的・系統的なアプローチを融合させる必要があります。
  • どちらにもオーディエンスがいます。デザイナーにとってはユーザーが、ライターにとっては読者がオーディエンスです。
  • どちらの領域でもエンパシー(相手の立場で考えること)が必要です。エンパシーを持つことで、オーディエンスの現状を理解でき、より関連性の高いものをデザインできます。
  • ライターにもデザイナーにもフロー(流れ)を生み出す役割があります。ユーザージャーニーが大事だと言われますが、それを実現するにはユーザー行動の流れをデザインすることが重要です。同じことが、複雑なことを説明したり、世の中の方向性を定めたりするようなストーリーのライティングにも当てはまります。

ストーリーテリングはすでにあるリソースで始められます。デザインスキルや作業ツール、その他のプロセスを活用して、デザインのナラティブを構築しましょう。

最後に注意点として、ナラティブを構築し、ストーリーを語ることは、自身の価値観に基づいて事実を提示することでもあります。人は皆、それぞれ異なる方法で点と点を結び付けて思考するため、ひとつの事実でもストーリーによってさまざまな解釈が可能になります。ナラティブ(語り)には、他の人に影響を与える力があります。その力を賢明かつ責任を持って使うようにしましょう。

プロダクトデザインのためのストーリーテリング — Wolfgang Klein R5dkbapm
Wolfgang Klein
Starデザインディレクター

Wolfgangは、豊富なキャリアを持つ世界的なデザインコンサルタントおよびリサーチャーで、多数のフォーチュン500企業で働いた経験と、6か国で暮らした経験があります。ストーリーテリングを得意とするWolfgangは、ロボットやIoTを使ったユニークな製品の発明にも関心が高く、そこから米国で複数の特許を出願中の、ロボット型車内コンパニオンが生まれました。

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