医療機器の相互運用性:医師に有意義に使用してもらうために開発時に考慮すべきポイント

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一般の消費者にもなじみのあるApple WatchやFitbitだけでなく、血糖値、血圧(血圧計やウェアラブルデバイス)、心拍数、睡眠、酸素飽和度を計測するデジタルヘルスケアデバイスが数多く市場に出ています。相互運用性を備えたヘルスケアツールは、デバイスから患者向けアプリや医師のEMR(Electric Medical Record、電子カルテ)にデータをプッシュする機能を提供し、医療従事者が患者さんの健康状態をより総合的に把握できるようにしています。

ただ、個人用の健康追跡デバイスの多くは、病院などの医療機関で使われる専用の測定機器ほど正確ではありません。そのため多くの医師は、このようなデバイスからのデータについて、時間と労力をかけて確認するだけの価値をまだ見出せていないのが現状です。

今、私たちは重要な転換点を迎えています。一般消費者向けでも、規制対象のものでも、ウェアラブル製品は大きな可能性を秘めていますが、医療機器ベンダーの多くは、まだ医療従事者のニーズや希望に十分応えられていない可能性があります。医療従事者からの支持を得て、患者さんのアドヒアランスを確保するために、何を考慮するべきでしょうか。以下では、ヘルステック分野の企業がメドテック製品を開発する際に検討すべきポイントをご紹介します。

相互運用性の重要性とそれがもたらす機会について、こちらの記事で詳しく解説しています。

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ヘルスケアデータの爆発的増加

平均的なウェアラブル機器は1日あたり25万回の測定を行うといわれます。それが何百万人分もあることを考えると、ヘルスケア分野のデータの規模がいかに大きいかが理解できるでしょう。ますます多くのデバイスが登場するなかで浮かび上がってくる課題は、いかに患者さんの健康情報をわかりやすく提供して、医師の業務フローに組み込めるようにするかという点です。

医師は、あらゆる情報を処理して、患者さんの健康状態に関する洞察をすばやく提供してくれるようなデータ分析・管理のソリューションを求めています。患者さんが自身の症状を管理するのに苦労している場合を除いて、医師はほとんどの場合、設定した目標値から外れた場合のみ、その患者さんのデータを確認したい(通知を受け取りたい)と考えています。

たとえば、糖尿病予備群(A1c値が5.7%〜6.4%、血糖値が7.0〜8.2mmol/Lの間で安定している状態)と診断された患者さんに対して、医師が6.0〜6.8mmol/Lの範囲を目標値に設定したとします。医師は、患者さんのデータが数日連続してその範囲を超えた場合にのみ、通知が届くような仕組みを望むでしょう。それにより、異常がみられた場合にのみ、医師は介入や来院の推奨を行うことができます。値が目標範囲内に収まっているなら毎日の通知は必要ありません。

つまり、情報をいかに提示するか、それを誰が受け取るのかについて考える必要があります。患者さんの視点では、最新情報を毎日確認できることは、自身の習慣や服薬が生活にどのような影響を与えているかを理解することに役立ちます。それによって、治療計画を積極的に守ろうと思うようになるかもしれません。

一方で、医療従事者は、整理された情報を求めています。また、受け取るデータの種類を管理し、患者さんごとのニーズに合わせて調整したいとも考えています。つまり、医師が電子カルテにインポートするデータの種類を決められるようにする必要があります。医療従事者が受け取り閲覧するデータの種類と、その通知方法を、柔軟に設定できるようにするべきです。

Medical device interoperability

一般消費者向けデバイスの校正と、医療機器のデータ規格への対応

一般消費者向けのヘルスケア製品では、データの質が常に問題になります。たとえば、家庭用の体重計なら1キロ程度の誤差は大きな問題ではありませんが、血圧や血糖値などの分野では、このようなズレは、慢性疾患への深刻な影響の発見を遅らせるおそれがあります。逆に、医療従事者が不要な懸念を抱くことで、ただでさえ忙しい日々の仕事の負担増につながる可能性もあります。

一般消費者向けの医療機器も、適合性試験を受ける場合があるとはいえ、それがすべての血圧計や心拍数トラッカーがまったく同じ結果を出すことを意味するわけではありません。規制当局の厳しい審査を受けて基準を満たした医療機器と比べると、厳密さに欠けるケースがしばしばあります。

たとえば、家庭用の血圧計がいつも少し高めの数値を出す、という場合を想像してみてください。医療機関の血圧計での測定値(135/85)よりも、その家庭用血圧計での測定値が高い(140/90、ステージ2の高血圧に相当)なら、誤った不安を招くことになります。この問題に対処する方法のひとつは、医療機関での測定値をもとに、家庭用の測定器を校正することです。適切なソフトウェアを用いれば、医療従事者は校正後の結果に基づいて、本当に懸念すべき事態が発生した場合にのみ通知を受け取れるようになります。

これは、患者主導のデータと医療用データを区別するという重要なポイントにつながります。患者主導のデータは、臨床データを補完するのに役立ちます。多くの場合、臨床検査はそれほど頻繁には行なわれないため、患者主導のデータがあることで、医療従事者は検査と検査の間に懸念すべき傾向が生じていないか確認できます。もちろん両方のデータとも電子カルテに記録されるべきですが、その際に両者を簡単に区別できる形になっていることが重要です。Starは、この違いをすばやく理解・分析できるようにするために、表形式ではなくグラフィック表示で提示することを強く推奨しています。

多忙な医師も、患者主導のデータに関心を持っています。そのため、SaMD(プログラム医療機器)ソリューションを開発する医療機器メーカーは、医師が校正結果を入力できる仕組みを組み込むことができれば、患者主導型データを有効に活用するソリューションを受け入れてもらえる機会が広がるでしょう。

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相互運用性には初期段階から優先的に取り組むべき

患者主導のデータを医師の電子カルテに統合して、臨床機器から得られる結果を補完しようとするなら、そのデータはHL7 v2やFHIRといった相互運用性に対応した医療データの規格に従っている必要があります。すべての電子カルテに対応している規格を使うことで、患者さんのケアを担当する全員が簡単にデータにアクセスできるようになります。医師は患者主導のデータと臨床データを同時に見ながら、患者さんの状態を確認できるようになります。

これは医療機器の開発において、きわめて重要なポイントです。慢性疾患の患者さんに対応するケアチームには、多くの場合、かかりつけ医、専門医、担当看護師(慢性疾患や患者アウトカムを専門とする看護師)が含まれます。そのメンバー全員が、遠隔患者モニタリングのデータにアクセスできる必要があります。 ただ、医師の中には、患者主導のデータを確認することを望まない人や、その時間的余裕のない人もいます。検査結果や画像診断結果、コンサルテーションレポートの受け取り・確認は依然として医師の責任ですが、このモニタリングデータについては看護師が取り扱うことができます。看護師が、次の診察までの間の患者さんとのやりとりを管理する役割を担えるのです。

今挙げたのは最もシンプルなレベルです。このチームにさらに医療専門家を追加したい場合はどうなるでしょうか? そのようなケースに対応するためにも、医療情報システムの相互運用性と柔軟性の確保は不可欠であり、機能のロードマップにも落とし込んでおく必要があります。

その一例が、患者主導のデータに関する通知は、担当の看護師だけに届くように設定できる機能です。データを確認した看護師は、どの情報を患者さんの電子カルテに送るか、あるいは患者さんにいつ診察に来るよう伝えるかを判断できます。また、医師は、患者主導のデータに関して、重要な通知は自分あてに直接届くように調整したいと考えています。たとえば、結果が危険な異常値を示している場合などです。

患者さんごとに、さまざまなニーズがあります。そのためメドテック製品メーカーは、医師が機能の一部を有効化/無効化したり、パラメータを設定したりできるダッシュボードやソリューションを、いかに構築できるかを検討する必要があります。

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医療機器における相互運用性を実現する方法

医療機器の開発は、次の3つの段階に分けることができます。

  • MVP(Minimum Viable Product、必要最小限の機能を持つプロダクト)のリリースとして、正確なデータを、患者さんが読める形式で出力できるようなソリューションを構築する
  • 次の段階として、患者さんがデータにアクセスし、データを共有できる仕組みを構築する
  • 最後に、データを電子カルテにプッシュし、医師がどのデータをインポートするのかを管理できるようなソリューションを構築する

MVPリリースの段階で、健康データを追跡し、アプリやダッシュボードに表示できるデバイスを開発します。Starの調査から、医師は一般的にアプリよりもダッシュボードを好む傾向にあることがわかっています。ただ、思い込みは禁物です。ターゲットユーザーを調査して、ニーズを把握し、何が適切なのかを判断しましょう。

最初の段階から、医療機器のデータ入力の標準規格に対応したシステム(SNOWMED、ICD10、LOINCなど)を準備することが不可欠です。すべての医療・健康データがこのような国際的な仕様で体系化されていれば、医療データをやり取りする際にも一貫性と正確性が保たれ、医療過誤のリスクを低減できます。

ダッシュボードに送られるデータは、医師がすぐに傾向を把握できるよう、対象となる情報とグラフィック形式で比較できるようにするのがよいでしょう。また、測定結果について、数値の単位がわかりやすく表示・レイアウトされていることも重要です。

さらに、医師が気になるデータをすばやく確認できるようなフィルターの機能も必要です。医療従事者が自らポータルをチェックすることは期待せず、通知の機能も用意しましょう。

そして、医師が電子カルテから直接ポータルを立ち上げて、(APIを使って)自動的にログインし、患者データを検索できるような仕組みにする必要もあります。何より大切なのは時間です。いくら直感的なダッシュボードであっても、医師は自らオンラインで情報を探し、ログインし、患者データ全体を検索するような手間は望んでいません。

医師にとって有益な関連情報が十分に含まれていることが大事です。たとえば、患者さんが血圧や血糖値を記録している途中に、患者さん自身でメモを追加できる機能があれば、医師にとっても役立ちます。

具体的には、旅行に出かけたなどの理由で、食事制限を守ることができなかった場合に、患者さんがメモを残しておくことで、医師はそれが懸念すべき事態ではないと判別できます。このような説明なしに、異常値が数日続いたら、医師は患者さんを診察に呼び出さないといけないと考えるかもしれません。患者さんからの簡単な説明があることで、不要な介入を避け、関係者全員の時間を節約できます。

このような機能が本当に必須なのか、「あった方が良い」レベルのものではないのかと、疑問に思う人もいるかもしれません。データを解釈・利用するのに負担が増えるようなソリューションであれば、多くの医師は実用的だとは思わず、それを受け入れることはないでしょう。製品開発のどの段階においても、このことを頭に入れておくことが大切です。

SaMDやメドテックの開発に役立つ、さらなるインサイト

患者主導のデータ、ウェアラブル機器、その他の画期的なテクノロジーが、ヘルスケア分野の進化を後押ししています。ここで紹介したポイントは、SaMDプロダクト開発の旅の始まりに過ぎません。皆さまがより迅速にプロジェクトを進められるよう、StarはアイデアからMVPリリースまでのプロセスで役立つチェックリストをまとめました。そこでは以下に関する情報がまとまっています。

  • 通知
  • インテグレーション
  • システムアーキテクチャ
  • ユーザビリティ

今すぐチェックリストをダウンロードして、現状を突破するSaMD、メドテック、デジタルヘルスケアプロダクトの開発を始めましょう。

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