医療の未来はどのようなものになるでしょうか? StarはMagic Leapと提携し、ヘルスケア関連企業がエコシステムの進化を主導するために今すぐ活用できる、重要な知見を提供しています。
今後、デジタルヘルスを活用したケアモデルにより、医療の活動の場が病院から地域社会、家庭へと移っていくと予想されます。そのような分散化する医療を統合する役割を果たすのが、ケアをコーディネートする機能です。それにより、健康状態の改善、医療費の削減、患者さんおよびスタッフの体験向上という4つの目標に向けて、より効果的なアプローチを採用できるようになるでしょう。
デジタルヘルスを活用したイノベーションが、新しい医療モデルへの移行を加速させています。今知っておくべきことを、ウェビナーとレポートでご紹介しています。
得られる知見:
- 新しいデジタルヘルス技術の登場を促す、主要なトレンドと変化の推進要因
- ケアコーディネーションモデルとはどのようなもので、どのような役割を果たすのか
- ケアコーディネーションは、患者さん、専門家、コミュニティナースといった主要なステークホルダーにどのような影響を与えるのか
- すでにヘルスケア分野に導入されているテクノロジーをどのように活用していくべきか
ヘルスケア業界の変化を推進する要因
この1年は、将来に向けて、堅牢で復元力のある持続可能な医療システムの構築が急務であることを実感した年でした。
私たちは高齢化社会に向けて、医療が直面する制度上の課題解決に着手しなければなりません。現在、65歳以上の高齢者は世界の人口の8.5%(6億1700万人)を占め、2050年には世界人口の17%(16億人)にまで増加すると予想されています。
今でさえ、すでに医療システムは悲鳴を上げています。労働力の不足も予想され、このままでは多くの人々が高齢になったときに、必要なケアを受けられなくなるでしょう。
医療費も増加の一途をたどり、今年末には8.8兆ドルに達すると予測されています。このことは世界中で多くの経済的、社会的、政治的問題を引き起こしています。
ただ、このような状況は、イノベーションが力を発揮するチャンスであるとも言えます。私たちは新型コロナウイルス禍から、データに基づく知見を活用し、デジタルヘルスツールを導入すれば、医療システムの効率や効果が上がることを学びました。
新しいツールを包括的、統合的、協調的なケアと結びつけることで、今後進むべき道筋が見えてくるはずです。
なぜ今、ケアコーディネーションが重要なのか
医師、看護師、ケースワーカー、専門家といった医療従事者が連携することで、患者さんの健康状態の向上につなげる――これがケアコーディネーションの基本的な考え方です。ケアコーディネーションは、患者さんの健康状態と満足度を向上させる、効率的で取り入れやすいアプローチとして長く評価されてきました。
また、ケアコーディネーションは、「価値に基づく医療」による医療革命の成功に不可欠な要素でもあります。
主な知見
- 安全なエコシステム内で相互運用可能なデータを活用することで、より集中的なケアコーディネーションが可能になり、患者さんの治療の合理化・改善につながります。
- 医療の分散化が進むにつれ、ケアコーディネーションは重要性を増し、ヘルスケアの基幹となっていきます。
- 医療の分散化により、現在の病院を中心にした医療活動の多くは、地域社会や家庭で行われるようになるでしょう。
ケアコーディネーションセンターとは?
StarとMagic Leapは、ケアコーディネーションセンターが、医療業務の司令塔的な役割を果たしていくと考えています。センターには意思決定者や専門家がオフライン/オンラインで集まり、地域社会全体におけるケア提供の調整や実行を担います。
つまり、未来の病院とは、建物のことではなく、ネットワーク化された概念になっていきます。分散した専門的なケアをつなぐことで、地域社会の医療ニーズに効果的に対応していく存在となるのです。
専門家は、データやデジタルヘルス技術を駆使して、看護師やプライマリケア医をコーディネートし、以下のようなさまざまなレベルのケアを調整する役割を担います。
- 慢性疾患のケアマネジメント:患者さんにとって最適なプロセスを予測し、どこで治療を受けるべきかをアドバイスするとともに、個人のプロファイルや現在の治療法といった重要なデータを個人健康記録(PHR)に集約して活用しやすくすることで、患者さん、プライマリケア医、専門家らにメリットをもたらします。
- データと知見の集約:遠隔患者モニタリング(RPM)、デジタル治療(DTx)、個人健康記録(PHR)といった複数の情報源からのデータを電子健康記録(EHR)に一元化。スマートなソフトウェアが情報を集約、分析、強調して、関連性が高くタイムリーで意味のある知見を提供します。
- 集団全体の健康管理:健康状態の追跡と分析によって、集団健康管理(ポピュレーションヘルスマネジメント)の効果を高めます。専門家は、ウェアラブルデバイスやネットワークから得られるデータを分析することで、感染症を予測し、慢性疾患など地域の健康問題を監視して、適切な介入策を講じられるようになります。
- キャパシティマネジメント:センターから臨床医に、施設の現在および将来のキャパシティ情報を提供。患者さんの流れを調整して、リソースを効率的に配分できるようになります。
- 資産の記録と管理:センターは、個人健康記録(PHR)や電子健康記録(EHR)から得られた健康データを管理するほか、バックオフィスの役割も担当。ケアに関連する医療機器や消耗品の配布・管理を行います。
データを利用しやすくする
ケアコーディネーションにおいては、コーディネートする人がケアについて十分な情報を持っていることが重要です。データの共有が得意とは言えなかった医療業界でも、従来の縦割り状態を越えて、医療データが移動し始めています。未来の病院では、今よりもはるかに多くの情報を活用する必要があるため、この変革は重要です。
従来の電子健康記録(EHR)は、医師による記録と請求コードの管理のためだけのもので、データの共有は目的としていませんでした。そのため、隣の部門に患者情報を共有するだけでも簡単ではありません。情報共有を容易にするために、HIE(Health Information Exchanges:医療情報交換)などのネットワークが構築されましたが、これは患者さんがネットワーク内にいることが前提となっています。
データ利用に関する新しい規則により、患者さんは自らの医療記録にほぼ自由にアクセスできるようになり、ヘルスウォレットの導入も始まりそうです。患者さんは、かかっている医療機関から医療履歴のデジタルコピーを取得できるようになります。患者さんが他の国や地域に移動する可能性も考えると、履歴情報は単独の医療機関では管理できないほど膨大で複雑なものとなるでしょう。
未来の病院は、自らが持つデータを活用するだけではなく、患者さんが持つ医療記録を受け取る仕組みを用意しなければなりません。患者さんは、デジタルツールを用いて、関連情報や健康状態のデータを病院と共有するようになります。
サービスを統合する
この分野への活発な投資に後押しされ、デジタルヘルス関連の新興企業が続々と誕生しています。これらの企業は、遠隔医療ツール、デジタルバイオマーカー、音声アシスタント、デジタルトリアージツール、デジタル治療などを活用して、独自の個別化ソリューションを打ち出しています。
2019年には米国のデジタルヘルス系新興企業359社が、600以上の投資家から74億ドルを調達し、過去最高額に迫りました。2020年には成立案件数、案件あたりの調達額ともに上昇し、合計で141億ドルを調達しました。
ただ、現状では各テクノロジーが孤立しているように見えます。保険者や医療提供者がデジタルヘルス分野への投資を積極的に進めようとしているなか、新興企業をまとめ、それぞれの能力を効果的に統合し、医療従事者のワークフローや患者さんのケアを最適化するという領域にチャンスがありそうです。
(ディスカッションは英語で行われています。)
ケアの未来に向けて加速する
ヘルスケア分野で、現在および将来の需要に柔軟に対応し、製品開発を成功させるために、Starが大事にしているポイントをお伝えします。
- 最終目標や将来像を明確にすること。どのように患者さんや医療提供者に役立ち、効率を向上させるか?
- それを実現するために、どのようなデータが必要なのかを理解する
- そのデータの入手方法を知る。どこに接続すればよいのか、他に情報源はないか?
- 接続性だけでなく、優れた相互運用性を実現するために、データをどのように解釈し、共有すればよいか?
- おそらく最も重要なのは、あらゆるユーザーのニーズを満たすソリューションを設計すること。サービスを利用してもらうにはユーザービリティの考慮が不可欠です。
ヘルスケア分野では、すでにさまざまなビジネスの相乗効果が生まれています。主要なステークホルダーが提携して、新しい製品やサービスを構築しようとしています。
その流れに乗るには、自社の製品が全体像の中でどのように位置づけられるのかを理解する必要があります。
そのためには、データ共有の促進を念頭に置いて状況を見ることが大切です。このような協力は、業界の4つの目標の達成につながるだけでなく、より効率的で拡張性のあるソリューションを生み出し、すべての人にメリットをもたらすでしょう。