HMIデザインのプロセスとベストプラクティス

概要

魅力的で洗練された自動車HMIのデザインを繰り返し手がける上で、必要なものは何でしょうか？それは実証されたプロセスです。どのようなプロジェクトに取り組む場合にも、エンジニア、デザイナー、ストラテジストからなるStarのチームは常に、明確に定義されたHMIデザインの原則に沿って仕事を進めています。そこで今回は私たちの仕事のアプローチをご紹介し、なぜ自動車HMIのデザインがこれまで以上に重要になっているのかについても解説します。

自動車用のHMI（ヒューマン・マシン・インターフェイス）の新しい波が、ドライバーと自動車の関わり方を変えようとしています。テクノロジーの進歩、消費者からの期待、コネクテッドカーや自律走行車の市場の着実な成長が、自動車HMI業界の発展を促しています。今や自動車は、実質的にスマート機器と呼べるようなものへと進化しつつあります。ドライバーや同乗者にとって、HMIはエンターテインメント、安全性、コネクティビティ機能への入り口であり、自律走行機能を快適に利用するためにも不可欠な存在です。自動車メーカーでは、ユーザーの行動やニーズに応じて車内UXをパーソナライズしていく傾向がますます強まっています。また、複数のインターフェイスに対応したマルチモーダルHMIシステム、車載コンパニオンロボット（コボット）、自動車HMIとモバイルアプリの相互接続といった機能もトレンドになっています。

効果的なHMIデザインにより、ドライバーと車の関係が強化され、車の価値が向上していきます。ただ、適切なHMIを開発することは簡単ではありません。そこには新しいテクノロジーとデザインのベストプラクティスに対する深い理解が必要になります。HMIの目的は運転の安全性を高め、ドライバーと同乗者の体験を向上させることですが、車の「コックピット」に警告などの情報が多すぎると、かえって邪魔になることがあります。さらに、自動車HMIのデザインに地域差を反映させる、HMIのアップデートを迅速かつコスト効率よく展開する、普及率を高めるためにドライバーに機能に関する教育を行う、といったこともHMIデザインにおける課題として挙げられます。

HMIデザインプロセスの概要

Starは、実証済みのデザインプロセスにより、さまざまな課題を克服し、デジタルダッシュボードから受賞歴のあるコボットまで、お客様企業とともに革新的なHMIテクノロジーをデザインしています。以下で、そのプロセスの概要をご紹介します。

なお、以下のプロセスは、一般的なビジュアルタッチスクリーンのインターフェイスに適用されるものです。車内HMIの世界では、音声アシスタントによる操作、音声フィードバック、ハードキー操作や触覚フィードバックなどによるタッチインターフェイスなど、複数のインターフェイスに対応したマルチモーダルなコミュニケーションがますます広がりを見せています。

そのような最先端のマルチモーダルHMIを、Starはどのようにデザインしているのか。その詳細を知りたい方は、ぜひStarまでお問い合わせください。

フェーズ 1：リサーチ

私たちはまず、お客様企業のブランドとそのエンドユーザーを理解するためのデスクリサーチを行います。そして得られた情報を当社が持つ、自動車HMIのトレンドに関する知識と組み合わせます。それをもとに、誰のためにデザインするのか、どのような価値を提案するのか、さまざまな車種や画面サイズにおいてどのように統一感を持たせるのか、といったことを定義していきます。

Starは、常に分野横断的な専門チームを編成し、新しいテクノロジーやHMIデザインのベストプラクティスを活用して、お客様企業のニーズや目標に応じたデザインのコンセプトを調査・検証します。それらは常にユーザー中心のアプローチで行われます。

主なアウトプット：

競合分析、UIアーキテクチャと構造アイデア、ドライバーのプロファイル
リモートまたは対面でのビジュアルデザインワークショップ
総合的なデザイン意図を定義するビジュアルディレクション
洗練されたUI構造とフレームワークのアイデア – 画面サイズ、レイアウト、画面の向きへの対応
ユーザー検証セッション

フェーズ 2：インタラクション

次に取り組むのはインタラクションデザインで、クリックで操作できる、上位レベルのプロトタイプを作成します。これによりデザインがコンセプトに沿っていることを確認し、ユーザーと車内インターフェイスとの関わり方を視覚的に理解します。車内UXはそれ単体で開発できるものではありません。そのため私たちは第一・第二階層の画面と情報アーキテクチャを詳細に検討し、よりシームレスなエンドツーエンドのHMI体験を生み出すために、それらをどうつなげていけばよいかを考えます。また、コンポーネントライブラリの定義に着手し、どのような画面レイアウトが必要かを明確にしていきます。

主なアウトプット：

コアモジュールについてのローフィデリティ（低忠実度）のワイヤーフレーム
インタラクションデザインに関する認識共有ワークショップ
人間工学およびアクセシビリティの内部テスト
情報アーキテクチャとUIレイアウトの最終決定

フェーズ 3：ビジュアル＆ライブラリ

納品前の最終フェーズとして、すべてのシステム画面に対してユーザーフレンドリーなデザインを完成させ、各コンポーネントやモジュールを調整します。また、以降のエンジニアリングフェーズをスムーズに進めるため、UI要素やページテンプレートを統合コレクションとして整理します。

主なアウトプット：

最終的なUIとビジュアルデザイン（Figmaで納品）
テーマ設定アプローチの説明とテスト
すべてのモジュールにおける全機能画面
UIコンポーネントのライブラリ
画面テンプレートのライブラリ
クロスランゲージチェック

フェーズ 4：モーション

自動車HMIデザインのすべてのコンポーネントについて、モーションフレームワークを作成します。このステップは、ビジュアルデザインのフェーズと並行して行われます。すべてのUI要素に一貫性のあるモーション原則を適用して、継続的な体験のループを確保することが目的です。

主なアウトプット：

コアコンポーネント（ボタン、ラベルなど）のアニメーション
変形型コンポーネント（計器、ウィジェット、カードなど）のストーリーボード
After Effectsのモーションシーケンスファイル
開発チーム向けのモーションパラメータ（値とガイド）

フェーズ 5：実装

このフェーズでは、お客様企業のチームとともに、1対1でのデザイン実装、適切なUIコンポーネントの適用、モデルの理解を進めていきます。実装可能な範囲での変更や再デザインのリクエストにも、このフェーズで対応します。引き続きエンドユーザーのことを考え、そのニーズに確実に応えられるよう改善を図っていきます。

主なアウトプット：

ビジュアルデザインとインタラクションデザインの継続的なサポート
デザインガイドラインの文書化
エンジニアリングの社内納期に合わせたデザインスコープ、機能、レイアウトの調整
開発アウトプットのレビューとテストによる品質管理

HMIデザインのステップとベストプラクティス

今日の消費者にとって、車内UXは外観と同じくらい、あるいはそれ以上に重要です。以下では、HMIデザインのベストプラクティスと、私たちがHMIデザインの各ステップに取り組む際に考慮している原則の一部をご紹介します。

ユーザー中心を第一に考える

Starは各フェーズにおいて、ユーザーとそのニーズに焦点を当てた、反復的なデザインプロセスを実施します。自動車HMIを始めとするあらゆるプロジェクトで、私たちは継続的にフィードバックを求め、使用を邪魔するのではなくユーザーに力を与えるようなHMI技術で、ユーザビリティとアクセシビリティの高いプロダクトを生み出します。

消費者と競合他社について知る

エンドユーザーを理解しなければ、効果的な自動車HMIをデザインすることは不可能です。デスクリサーチは、業界やトレンドについての専門知識と、ユーザーの深い理解を結びつける重要なプロセスのひとつです。それと同じく大切なのは、競合他社の状況を理解すること。それによりベストプラクティスを反映しながら、他社と差別化を図れるHMIテクノロジーを構築できます。StarはHMIをデザインする際に、常に詳細な競合分析を行っています。

クロススクリーン、地域、メーカー、車種への対応

Starは、足元の問題やユーザーのニーズ・好みを考慮するだけでなく、メーカーや車種を超えたHMI体験をどのように創出し、統一できるかを考えます。また、さまざまな地域や市場における自動車HMIのトレンドについても、常に最新情報を入手しています。Starは世界14か所に拠点を持つ真のグローバルチームであることも、その一助となっています。

HMIデザインの原則：コラボレーションと透明性

コラボレーションは、Starの代名詞とも言える特徴のひとつです。私たちは、すべてのステップにお客様企業を招き、お客様の目的とエンドユーザーを確実に理解するよう努めています。

モジュール型アプローチ

Starは自動車HMIを構築するにあたって、すべてのシステム画面、コンポーネント、モジュールを考慮に入れます。また、一貫性とシンプルさを確保するため、ページテンプレート集を含むデザインとUI要素のライブラリを作成します。モジュール方式を採用することで、地域や車種に応じたHMIの調整・更新が容易になります。

Star：エンドツーエンドのパートナーとして

当社の実績ある自動車HMIのデザインプロセスは、Starを他とは違うユニークな存在にしている特徴のひとつです。また、戦略、デザイン、エンジニアリングをシームレスなワークフローにつなげることで、インパクトのある革新的なテクノロジープロダクトを生み出せることもStarならではの強みです。スタートアップの精神を持つ私たちは、リソースを最大限に活用し、迅速に結果を出すことができます。

NIOとの受賞歴のあるコボットの共同設計から、インドとタイの消費者向けの次世代HMIデザインまで、自動車に関するStarの専門的な知識・経験はグローバルに広がっています。HMIやインフォテインメントシステムのデザイン、使いやすいアプリケーションやサービスの開発、モビリティと車両を統合したプラットフォームの構築など、幅広いプロジェクトで力を発揮しています。