フィンテックサービスの立ち上げを成功させる秘訣とは? それがポッドキャスト『Shine』の今回のテーマです。
MonavateとStarから2名の専門家を招き、この重要な問いへの答えを探りました。Monavateの最高経営責任者Michael Rolph氏は、フィンテック企業の創業者としての経験を共有。StarのプロダクトマネージャーVolodymyr Bortは、デジタルファイナンス革新に向けたアイデア創出、開発、リリース、拡張において多数の企業を支援してきたStarフィンテック部門の知見を伝えました。両ゲストの話から、製品および市場化の戦略、技術的な検討事項、チーム作り、規模拡張などを網羅した全体像が見えてきます。
スタートアップから大手企業まで、業界を問わず、あらゆる組織に役立つ洞察が語られています。ぜひお聴き逃しなく。
フィンテックサービスの立ち上げ戦略とは
ポッドキャストでは、まずRolph氏が、Yoyoの共同創設者・会長としての経験を語ってくれました。Yoyoは、個人別にカスタマイズした決済サービスを含むリワードソフトウェアソリューションを提供して、顧客のロイヤリティ向上に取り組む企業です。同社のソリューションは1万7000店舗、20万以上のリテールレーンに導入され、月間500万のアクティブユーザーを擁しています。
ただ、初めからそうだったわけではありません。今では当たり前のようにEウォレット(電子マネー)やスマートフォンを使った決済サービスが使われていますが、Rolph氏はそこから一歩進んで、これを販売時点(ポイント・オブ・セールス、POS)での顧客識別や即時リワードサービスと統合しようと考えました。今日のYoyoの成功を見れば、この戦略を疑う人はいないでしょう。同氏は「アイデアを思いついた時、自分ほどそのアイデアに惚れ込んでいる者はいないと自覚していた」と振り返ります。
そして、ロンドンのインペリアル・カレッジをテストの舞台として、3000人以上を対象にYoyoを試してもらうよう売り込みました。特に初期の段階では、気概や決意が重要だと同氏は強調します。「何かを軌道に乗せるには、集中力と揺るぎない信念が必要なのです」
同時に、製品開発とマーケティング戦略にも取り組みました。Yoyoの最初のバージョンは、洗練されたフィンテックサービスのユーザー体験を提供しているとは言えませんでした。サードパーティの既製のソフトウェアを寄せ集めたシステムは「不格好で、洗練された消費者体験とは程遠い」ものだったのです。そこで同社は、販売時点(POS)で利用できる機能の統合に注力しながら、フィンテックサービスのインフラ構築に取り組みました。そうして正しい方向に歩み始めることができたのです。
また、Yoyoはユーザーを獲得するために、最初の登録者200人に5ポンドのクレジットを提供しました。これだけでも十分効果があるように思えますが、Rolph氏はさらに一歩踏み込み、自ら何人かのユーザーに連絡を取って、登録した理由を直接尋ねました。その結果、登録者の多くがテクノロジーに興味を持っていることがわかり、テストした大学キャンパスで何が起こっているのかを認識できたといいます。つまり、そのユーザーたちこそが友人たちを巻き込み、口コミで広めてくれる「伝道者」だったのです。このようなユーザー基盤と、製品の初期の枠組みを得たことで、Yoyoは軌道に乗りました。
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ポッドキャストは英語で提供しています
リーン、アジャイル、アダプティブ:フィンテックの新しい成功例
続いてVolodymyrが、数年前に「最新のデジタル銀行ソリューション」の構築を支援した経験について話しました。それは物理的なカードの利便性とブロックチェーンを組み合わせ、ユーザーが1つのアプリでフィアット通貨(法定通貨)と暗号通貨のウォレットを管理できるようにするソリューションでした。
Volodymyrはこう語ります。「無駄を省いたリーン・スタートアップの必要性を深く理解できました。私の経験では、それがMVP(実用最小限の製品)を実装する唯一のアプローチです。機能を追加するときは、少人数のフォーカスグループのユーザーでテストして、実際の市場で望まれているものであることを確認していきます」
このプロジェクトでは、ソリューションをグローバルに展開するにあたって、条件が整っている市場とそうでない市場があることがわかったため、一部の環境での導入を取りやめることにしました。ただ、完全に無視するのではなく、未対応の地域にサービスの導入を希望するかどうかをユーザーが投票できる仕組みを作りました。これによって、その市場にいつ参入すべきか、その地域でどれくらいのユーザー規模を見込めるのかを把握できるようになりました。
このような柔軟性もポイントのひとつだとVolodymyrは強調します。機能や地域についてテストすることは、ソリューションの初期段階だけでなくライフスパンを通じて、ユーザー数の規模にかかわらず重要なのです。
卓越したフィンテックサービスを生み出すには?
どの企業も優れた製品やサービスを生み出したいと考えています。ただ、Rolph氏が指摘するように、フィンテックの製品開発はそう簡単ではありません。「何が優れた製品であるかは、その時々によって異なる」からです。例えば、優れたユーザーエクスペリエンスが、初期段階での差別化に貢献したとしても、最終的な成功を導く要因にはならないかもしれません。
それよりも、拡張性やプロダクトマネジメント、適切なチーム作りが重要になると同氏は指摘します。「創業者はメンバーのスキルや性格、姿勢を知り、チームとしてどのような働きをするかを認識する必要があります。個人ではなく、チーム全体がいかに機能するかが重要なのです」
Volodymyrは、この問いを別の角度から見てこう語ります。「フィンテックを始めとするデジタル製品は、人々の時間を節約するものです」。つまり、どのように時間を節約し、優先順位をつけるかで、他との差をつけられるのです。
他社と差別化できるフィンテックサービスを作るには?
本記事ではトークの一部をご紹介しました。ポッドキャスト本編では、フィンテック製品で世界に本物の影響を与える方法や、管理、透明性、即効性、製品サポートの重要性など、さらに多くの話題を掘り下げています。Monavateのカードソリューションについても触れています。ぜひお聴き逃しなく。
また、こちらのケーススタディから、StarとMonavateとのエンドツーエンドのコラボレーションの詳細もご覧いただけます。